本作では、Motörhead、Duran Duran、The Cure、The Jam、Daryl Hall & John Oates、ほかDavid BowieやJoy Divisionといった70~80年代に活躍した名だたるアーティストが登場する。特に80年代、音楽シーンを席巻したのはMTV、ミュージックビデオのブーム。MotörheadのStay Cleanに始まり、コナーたち兄弟がDuran DuranのRioのMVを見るシーンへと繋がる。彼らの父がBeatlesに言及しながらも、子供たちが食い入るようにテレビを見る姿はまさしく当時の音楽シーンのありかたを示しているだろう。当時はまさにMTV全盛期だ!
そう、当時の流行はミュージックビデオにあった。そんなロンドンの音楽に惹かれ、コナーはバンドを結成。バンドの仲間と共にビデオの制作を始めていく。そしてその随所にも、様々なオマージュが見て取れる。コナーたちのバンドSing Streetの初めての曲になる『モデルの謎(The
Riddle Of The Model)』のビデオは、お世辞にも良いできとは言えなかった。衣装は自宅から持ってきた有り合わせで統一感はないし、メンバーはやりたい放題。しかしそれは意図されたナンセンスさだと私は思った。当時のMVがどれもセンスのあるものだったわけではない。もちろんナンセンスなものもたくさんあった。代表格は、Journeyの『Separate Ways』だろう。
A Beautiful
Seaは言うまでもなくキュアーを彷彿とさせる感じがツボに入った。そのうえ、MVを作るシーンがとてもかわいらしかった。演奏中にみんなでクラップを入れるシーンなど「演奏止まるじゃん!」と思わず言いたくなってしまうが、しかし80年代のMVはそんな感じだったなぁと、生まれる前の事ながら懐かしいように感じられた。
Drive It Like You Stole ItはUSダンスミュージックを思わせる曲で、特にリハーサルでコナーがBTTFにあるようなプロムの中で歌うシーンは、夢の中でありながら現実との境界が地続きとなっている、この映画の寓話的なイメージを印象付けさせる重要なシーンだった。彼が思い描く音楽のとおりにならないのは、悲哀を感じるところでもありながら、しかしこの映画における彼らの卓越した音楽そのすべてが実はコナーの妄想、彼が自分たちの音楽に酔いしれてそう見えているだけじゃないか、とさえ思わせる危うさが感じられた。
他にもGirlsの歌詞の伏線や、The
Riddle Of The Modelのとってつけたようなアジアンテイストとか(ニューウェーブ全盛期である)、ライブではひんしゅくを買うと言われながらも歌うバラード曲To Find Youなど捨て曲は一つもないというぐらい、サントラが素晴らしい。そのうえ映画での使われ方も工夫を凝らされていて、どの曲も好きになる箇所がある。 UKロック、80’sミュージックが好きな人間は必ず気にいる! それだけでなく、青春映画としてすべての兄弟たちに捧げるべき2016年最高の一本だ! おなじシンでも見るべきはこっちだぞ諸君!!