というわけで、最終章マイ・グッド・ラック・ソングスの解説です。
※以下ネタバレを含みます。
P248, Epiphone Riviera
雄貴が初めて購入したギター。赤いリヴィエラは、Don’t look back in angerのMVでノエル・ギャラガーが使用している。ノエルが赤いセミアコを使い始めた理由は、The Smiths時代のジョニー・マーの影響だとか。雄貴がリヴィエラを使うことについては、Part 1のカジノの項で示した通り、彼=オアシス、舞結=ビートルズということを暗示している。
P256, Champagne super nova / Oasis
オアシスのセカンド・アルバム『モーニング・グローリー』より。そもそもこの小説のコンセプトである「姉の部屋に楽器を持ち寄って、みんなで演奏する」というものは、この曲のMVに着想を得ている。雄貴の再始動の一曲目として、本作の起源でもあるこの曲を選んだ。
ちなみに雄貴は初めてのギターからこのころまでずっとエピフォンのリヴィエラを愛用している。また奏純もレスポールを使っている。これはオアシスが初期において使っていたギターを参考にしている。
一方でそれまで舞結が使っていたギター、カジノはビートルズの代名詞的存在でもあり。舞結を追いかける雄貴という構図が、ビートルズとオアシスの影響関係からも表している。……とかなんとか。
P283, Sound of Silence / Simon and Garfunkel
花嫁をさらうシーンで有名な映画『卒業』より、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」。雄貴が自嘲気味にこの曲を挙げているのは、もちろん『卒業』のラストシーンから。
花嫁=姉をさらってしまおうかと考える雄貴。しかし、それをやった結果、『卒業』のラストシーンでは一瞬の喜びこそあったものの、結婚式を抜け出した二人には現実を垣間見る。雄貴にとってもいつか姉は卒業しなければならないものだった。
またここでサイモン&ガーファンクルを挙げたことには、雄貴と奏純の関係性にもある。大学入学後、二人はバンドを結成するが、それはギター二人によるフォークデュオのような形態になっている。初期の考えでは三人組以上のバンドを結成させる予定だったが、「雄貴はそんなことしないだろう」という考えのもと「じゃあ、サイモン&ガーファンクルみたいなデュオにしちゃえ」ということに。
P294, Acquiesce / Oasis
本作のラストシーンを飾る曲であり、再結成したシスターズ・ルームがカバーする第一曲。『サム・マイト・セイ』のB面で、『ザ・マスタープラン』収録。
実は当初の予定では、この曲だけは出さない予定だった。というのも、まず第一にこの曲はギャラガー兄弟二人がリードボーカルであること。そして詞が直接的にギャラガー兄弟のことを表していると思える(ライナーノーツによれば、あくまでも友情の曲だとしている)からだ。姉弟の関係性はできるだけ音楽や心情のなかの暗喩に留めておきたかったという考えがあるので、出すか出さないか迷った。
しかし、結局この曲を選ぶこととなった。その原因は、映画『スーパーソニック』だ。
本作を執筆中に公開したこの映画。ギャラガー兄弟の誕生からオアシスの結成、そして伝説とも言われるネブワース公演までを描いている。(それこそ本作『シスターズ・ルーム』を読むうえで、「オアシスなんてバンド知らねえよ!」って人は見てみるといいかもしれない。……そんな人いるのか?)
そんな『スーパーソニック』だが、この作品はエンディングを「ザ・マスタープラン」で締めている。「アクイース」が収録されたものと同じ、B面集のアルバム『ザ・マスタープラン』からの一曲だ。ネブワース公演という絶頂期までしか描かない本作で、敢えて彼らのその後(オアシスはその後、兄弟喧嘩が原因で解散。今なお再結成の目処は立っておらず。いまだに兄弟喧嘩が続いている)をほのめかすように『ザ・マスタープラン』を入れた演出に、思わず痺れてしまった。
そういうわけもあり、じゃあこっちもそれに近い曲を。しかし映画とは被っていない曲をカバーさせようと考えついた。
そして何より本作の、終わり方は、第二章最終部(サイケデリックな夢のあたりだったはず)を書いていたところで、急遽変更された。元は姉弟の確執が広がっていくというバッド・エンドだったが、急遽大学生編を追加。姉弟の確執は残るものの、しかしその中に友情、姉弟愛を見出すような終わり方になった。そういうわけで、では姉弟でツインボーカルのできる曲。そして『兄弟』のことを表しているこの曲が候補に挙げられた。
また結婚式ライブでのメンバー編成は、奏純を含めてギターが二人(しかもエピフォンのレスポールとリヴィエラ)。ボーカルの雄貴と、ギター・ボーカルの舞結。そしてサイドギターの奏純と、ベースは円か、ドラムが保志くんと、ここでようやくオアシスと同じ編成になっている。
筆者:
機乃遥(@jehuty1120)
どうでもいいですが11月20日は僕の誕生日なので、誕生日プレゼントだと思って買ってやってください。
喜屋武みさき(@Misaki_Can315)
文学フリマ。僕はいけませんけど、会場のやせ細った青年一人よろしくおねがいします。
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