(※総解説、とはいうものの、出て来るものすべてを紹介すると結構な数になるので、比較的話の本筋に関わるものに絞っています)
※ネタバレを含みます
第一章 シスターズ・ルーム
P7, Hey Jude / The Beatles
皆様のご存知のビートルズの名曲。1968年にリリースされたシングル。B面はRevolution。作中でもメジャーでカンタンな曲だと取り上げられています。真っ先にこの一曲が出てきた理由としては、当時まだロクにギターも弾けなかった機乃が唯一弾けた曲だったからとか。誰でも知っている曲だから、などという理由があります。ビートルズに関しては、後述のエピフォン・カジノの項で詳述します。
P10, Smoke on the water / Deep Purple
ギターを弾き始めたらまず真っ先に覚えるとも言える名リフ中の名リフ。
このあともライブでのメンバー紹介など、何度か舞結が弾くシーンがあります。
カンタンなフレーズですが、実際はアップピッキングで弾いていたり。舞結姉ちゃんも、初めはダウンストロークで弾いてたのかな。
P11, Whatever / Oasis
本作の元ネタであるオアシスのギャラガー兄弟の一曲。オアシスのヒット曲のひとつ。シングルB面のSlide awayも必聴。
日本ではCMソングでの起用で有名になったオアシスの曲。あのときのリアムは天使の歌声だった……。
改稿前のなろう連載版では、ここで舞結はWonderwallを弾いていたが、Wonderwallを弾くにはカポタストが必要。この当時の舞結はまだ持ってないだろうということで、Whateverに改稿されました。
P13, Stairway to heaven(天国への階段) / Led Zeppelin
なんでギター始めて数ヶ月の舞結が弾けるんだ! と思わず言いたくなる、レッド・ツェッペリンのスーパー名曲。しかもアコギで。ここからすでに舞結姉ちゃんの天才っぷりが見えてきます。
P22, Epiphone Casino
舞結が円かから譲り受けたエレキギター。ボディの中が空洞になっているいわゆるフルアコースティックギター。ビートルズのジョン・レノンが愛用したことで有名。
舞結にカジノを使わせた理由としては、彼女がビートルズにあたり、雄貴がオアシスにあたる関係をお互いの表現するためでもあった。
P24, Layla (いとしのレイラ) / Derek and the Dominos
エリック・クラプトンの名曲。ここで円にクラプトンを弾かせたのは、彼女が技巧派でおっさん臭いことを示すためだった。ちなみにここで円は右で弾いてますが、ふだんは左。これはポール・マッカトニーのオマージュですね。
P26, Rickenbacker Bass 4001
ポール・マッカートニーが愛用していたことで有名なエレクトリック・ベース。前述の通り千鳥円が左利きでリッケンバッカー使いなのは、ポール・マッカトニーのオマージュ。ひいては舞結達が雄貴=オアシスに対するビートルズという関係性を暗示している。
なお千鳥円のもう一つの元ネタであるザ・フーのジョン・エントウィッスルもこのベースを使用している。
P34, My Generation / The Who
この時流れていたのは、『ライヴ・アット・リーズ』での「マイ・ジェネレーション」。ライブ盤だと、そのあとに「シー・ミー・フィール・ミー」が入る。前述の通り円のモデルは、ザ・フーのジョン・エントウィッスルでもあり、彼女の憧れのベーシストのエントウィッスルである。
ちなみにザ・フーのジョン・エントウィッスルといえば、寡黙で表情を崩さないクールなベーシストである。ギターのように荒々しいサウンドのベースが特徴であり、サンダーフィンガーの異名を持っている。
P37, The Stone Roses / The Stone Roses
マンチェ山のボス猿ごとイアン・ブラウン率いるストーンローゼズのファーストアルバム。輪切りにしたレモンの描かれたジャケットが有名。このとき保志賢人が着ていたTシャツの柄がそれだったりする。保志君の名前の元ネタは安直ながらリンゴ・スターであるが、彼の音楽の趣味はストーンローゼズをはじめとする80~90年代ブリティッシュ・ロック。ちなみにその理由は、ヤンチャなルックスの一方で美しいブリティッシュ・ロックを演奏するストーンローゼズと、見かけによらず良い人な保志君を照らし合わせていたりする。
P45, Rock 'n' Roll Star / Oasis
オアシスのファースト・アルバム『オアシス』(Definitely Maybe)の一曲目。そのジャケットは、本作の表紙の元ネタだったりもする。シスターズ・ルームが演奏する一曲目としてこれが選ばれたのは、まずオアシスのファースト・アルバムの一曲目であること。そして、ロック・バンドの始まりを予感させるような一曲だということ。オアシスのギタリストであり、ギャラガー兄弟の兄ノエル・ギャラガー曰く、「オアシスの曲で歌詞にちゃんと意味があるのはこの曲ぐらい」とのこと。(しかしオアシスのギターは二人いるのに、舞結姉ちゃん一人でどうやって弾いているのだ……)
P60, シスターズ・ルーム / シスターズ・ルーム
記念すべき一曲目のオリジナル曲。作詞の経験もない高校生の男の子が、身近にあったものを適当に書き表した詞。そして何事もそつなくこなしてしまう天才的な姉によって生み出されたオアシスっぽい曲。楽曲のイメージとしてはオアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」だったり、「リヴ・フォーエヴァー」だったりする。
『シスターズ・ルーム』
天井のシミがボクらを見てる
ボクらが歌い出すのをシミは見てる
使い古した人形も見ている
僕らが歌ってるのをじっと見てる
役目を終えて吊るされた制服
真っ赤なリボン、シュルリと抜けて
カミ甘い香りひとつだけ手にして
ふと出た言葉を詩にして歌おう
*
五月の桜に落ちていく
桃色のなかへ沈んでいく
五月の桜に落ちていく
花のかおりへ沈んでいく
あなたのもとへ沈んでいく
歌詞の解説をしますと「天井のシミが僕らを見てる……」は、姉の部屋で二人きりという秘せられた空間での姉弟の趣味について言及している。二人を見ているのは部屋にあるモノだけしかない。そもそもこの二人の『二人きりの趣味』というのは、近親相姦の暗喩といったそういう含みとかをもたせたかった意図があります。
「役目を終えて吊るされた制服……」のところでは、高校生だった姉が思春期から大人へと近づいている。それが雄貴にとっての姉の死を暗示している。
「五月の桜」はこのとき舞結の部屋から見えた葉桜であり、また「桃色」は舞結のベッドの毛布を示している。そこへの回帰を望む雄貴の不可知のうちの思いがあるのでは……。
筆者:
機乃遥(@jehuty1120)
どうでもいいですが11月20日は僕の誕生日なので、誕生日プレゼントだと思って買ってやってください。
喜屋武みさき(@Misaki_Can315)
文学フリマ。僕はいけませんけど、会場のやせ細った青年一人よろしくおねがいします。
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