昨日、サイコパスだけは見る気が起きないと言った私。まあ、二期があまりにも微妙だったので、期待できなかったからなのだが。その上、なにやらサイバーパンク好きなオッサンどもをターゲットに当ててたのに、劇場には腐女子ばっかだと聞いたので(現に私がパトレイバーを初日に見にいった時はそんな感じだった)、じゃあ批判するためにも見に行ってやろう。と、勢い任せに見てきた。
で、見てきたのだが……。
すまん、ふつうにおもしろかった。
というか、昨日見たアップルシードより良かったかもしれない。映像の質はさておくが。
ところで、私がサイコパス二期が楽しめなかった最大の理由は、求めていたものと違うものを突きつけられたからだ。聡明な視聴者諸兄もそうであったはずだ。一期を視聴し、二期が始まると聞いて何を期待した? 咬噛とギノさんのホモホモしい展開? 違う。六合塚と唐之杜のレズセックス? 気持ちは分かるが、違う。
二期に何を求めていたかと言えば、それは後日談だ。咬噛が消え、常守が先輩になった公安のアフターストーリーのはずだ。それがなんだかよくわからん、ストーカーのマザコンひろしの話にすげ変わっている。そりゃ、楽しめなくて当然だった気がする。
劇場版は、そういう意味で私の見たかった三点と、もう一つ興味深い点を押さえてくれている。その三つというのが、まず前述の後日談。そして、ビバップばりの格闘アクション。劇場版では、そこにサイボーグ要素まで加わって、これでもかというアクションを見せてくれた。三つ目が、SF特有のガジェットの見せ場だ。
では、もう一つの興味深い点とは何か。それは、昨今の国内SFで流行の、いわゆる管理社会、管理都市ものの疑問点に立ち向かっていることだ。その疑問点が何かというと、
発展途上国で管理社会は成立するか、
というものだ。
管理社会というのを、私は現代の民主主義政府社会の先にあるものだと考えている。いや、元を正せばそのようなディストピア小説は、社会主義の現実批判に端を発する訳だが、しかし社会主義も資本主義社会へのカウンター的なところがあるから、まあよしとしよう。
話が逸れたが、問題の「疑問点」というのは、発展途上国すなわち紛争当事国で管理社会は成立するかということだ。人間がシステムに飼い慣らされる社会というのは、その前段階が必要なはずだ。つまり、民衆が政府の下に位置する社会。その政府が、民衆をシステムによって管理するかどうかが、管理社会であるかどうかというところだろう。だが、そんな民主主義も政府社会もへったくれもない紛争国では、そのようなシステムが運営可能であろうか?
私はこの疑問点について、伊藤計劃のハーモニーについて考える際、ぶち当たった。というのも、私が以前考えたハーモニーのアフターストーリー、『〈harmony After/〉』にて、「意識消失は、紛争当事国でも完全に発生しうるのか」という疑問の中で浮上した。世界各国の発展途上国すべてが、日本のようにWatchMeを導入している訳ではない。ならば、どこかで意識が存在する人間が現れるはず。という、疑問だ。
劇場版サイコパスでは、アジアの紛争国にシビュラシステムを輸出するという形で、この疑問への解を導き出している。すなわち、システムが開発独裁を意図的に発生させることで、国家を管理社会が実現可能なレベルにまで発展させるということだ。そうして、社会が一定レベルまで成長したところで、システムは独裁に関わった者を一掃する。
で、そんなことを平然とやってのけるシステムの手駒として、霜月のような存在が出てくる。空気を読め、という一言でシステムが発展途上の社会を取り込んでいく様子を容認している。一方で、やはりそれらに懐疑的なのが、咬噛や常守だ。咬噛は、第二の槙島になるかと言われたが、しかしそうはならなかった。なりかけていたが。
物語は、シビュラが導入された件の紛争当事国で、シビュラにあらがう咬噛。そして、彼を追う常守という形で進んでいく。やがて咬噛を見つけた常守は、成り行きで咬噛の味方につく。そこでシビュラに従いながらも、圧倒的な武力を行使する政府軍が描かれる。
とまあ、そんな「反政府弾圧怖い」という演出があるわけだが、しかし最後にそれらをも容易くぶっ殺していく日本警察こそが、一番恐ろしい。その対比というか、演出は、是非見てもらいたいところだ。
というわけで、遅ればせながらサイコパスを見てきた。個人的に、アクションもりもりのSFガジェットもりだくさんで嬉しかった。ここまでおもしろいと、逆に二期って何だったんだと思えてくる。
きっと私と同じく、二期がつまらなかったから、敬遠しているSF好きがいるはず。少なくとも、二期よりは格段におもしろいかったと私は感じた。
とはいえ一つ文句だけを言わせてもらうとしたら、あんまり日本の声優さんに英語で演技させないほうがいいんじゃないかなぁ……というところだ。
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