2016年1月22日金曜日

おみそれいたしました。ガルパンはいいぞ! 『ガールズ&パンツァー 劇場版』

 まわりじゃあどいつもこいつもガルパン、ガルパン……。何かに付けちゃあ「ガルパンはいいぞ」とコイツら何言ってんだ。クリード見ろよ、クリード! と、この間まで語っていたこの私。ガルパンブームも少し下火になってきたようなので、見てきました。劇場版ガルパン。
 正直なところを言いますと、ほぼ予備知識無しで見に行きました。知っていることといえば、


 ・戦車がスポーツになってる。
 ・戦車道というスポーツ。女子の嗜みらしい。
 ・なんか姉妹で色々やるらしい。


 ぐらいなもの。
 ですが、冒頭に三分ちょいでさくっと解説をしてくれたおかげで、まあ、なんとなくは世界観が分かった気がします。
 でまあ、機乃的にこの作品が良かったかどうか、率直に申し上げれば、
 
  良作、であります。

 まあ、とは言え冒頭からそんなふうに思ってた訳じゃあ無いんですよ。この映画の冒頭は、先述のように今までのザックリとした解説が為されます。廃校の危機を救うために、何とか頑張って戦車道大会で優勝しましたよ~ぐらいなもんの軽い解説。で、それが終わると直後には大会後のエキシビションマッチが始まります。で、いきなり戦車の砲撃から始まるもんですから、私も期待したんですね。まわりがアレだけスゲエスゲエ言う戦車アクションが如何ほどのものかと。しかしながら正直、冒頭のアクションはダルい。確かに、街中で戦車同士がドンパチするのはアニメならではの映像ではありますし、たくさんの戦車が一同に会して戦う姿など、それこそアニメでしか出来ない。ですが冒頭のアクションシーン。ここは正直頂けなかった。前評判が良かったせいも有りますが、ここで一気に、えー、言うほどカッコ良くねえぞこれと思ってしまった。
 しかも続くシーン。まあ、日常パートというべきでしょう。そこがなんとも萌アニメ的。まあ、そりゃそうなんですが。アニメの日常パートなんてどこもかしこもそんなようなもんで、イマイチ洋画ばっかり見ている人間からすれば鼻につくアニメクサさみたいに感じるわけです。
 そういうわけで、冒頭の言う程でもない戦車アクションと、鼻につく日常パート。このせいで僕の中では、
 腐っても深夜アニメは、深夜アニメ。
 というような意見にまとまりました。まあ、これならお前たちを論破出来るな。なーにが「ガルパンはいいぞ!」だ。という話。


 しかし、終盤にかけてのアクション。廃校撤回をかけての大学選抜チームと戦うんですが。ここで今までの私の評価はすっ飛びました。

 戦車にこんなアクションさせんの!?
 
 と、度肝を抜かされる展開の目白押し。艦砲射撃ばりの巨砲の大迫力! ドリフトする戦車! 戦車が戦車を踏み台にしたァ!? 履帯パージだとォ!? 砲撃で加速ゥ!?
 と、見たこともない、度肝を抜かれる演出ばかり。大体、洋画、戦争映画での戦車の立ち位置というと、歩兵と一緒に行動する、強力だけど動きがない。イマイチ派手さにかけるイメージ。某007の戦車アクションとか、そういうアレもありますが、基本的にミリタリー調の作品だと、戦車というのは歩兵の脅威だとか、そういうような描かれ方ばかり。しかしガルパンは、そうではない。まるでロボットアニメや、カーアクション映画を見ているように戦車を楽しめる。戦車ってこんなに動けるの!? という感じ。戦車の可能性を一気に押し広げたと言っていい。

 そして何より、私が特に気に入ったのはラスト、西住姉妹が協力して大学選抜チームのリーダー島田 愛里寿を倒すシーン。ここの何がすごいかって、西住みほの主観での長回し。そして、キャラが全くしゃべらないという所。萌アニメにはあるまじきシーンだとは思いません!? かわいい女の子キャラは一人称が故に映らないし、声優さんのかわいい声さえ出てこない。まったく喋らず、姉妹のアイコンタクトと無言のサインだけで全てが通じあい、主観で戦いが進む。そして、ラスト、ようやく三人称になり、姉妹の協力で決着が着く……!

 なんだこれ、すげえぞ!!
 
 と、思わず新宿バルト9でスタンディングオベーションしそうになる気持ちを抑える機乃。
 ともかくラストは、まったく「深夜アニメ」という枠を超越したような演出に思えました。かといって、実写映画じゃあそうそう描けない「ありえない機動」をする戦車を描く。それはアニメにしか出来ないことであるし、仮に実写映画で出来たとしても、CGゴリゴリで萎えてしまうだろう。
 これは深夜アニメという枠にはとらわれない。一つの「エンタメ映画」の完成形であると感じた。アニメーションでしか出来ない戦車の描き方。しかし、深夜アニメではない、その枠を超えたエンタメ映画。
 まったくこれはこの一言に尽きる。

 ガルパンはいいぞ。

 だが正直な所、TV版が劇場版並の演出なはずがないと思うので、TV版を見る気になれない機乃であった。

2016年1月9日土曜日

漢は立ち上がり続ける。 『クリード チャンプを継ぐ男』

 ロッキーは僕の大好きな映画の一つだ。特に1の不器用ながらも立ち上がるロッキーと、ファイナルの老いてなお戦い続ける彼の勇姿が大好きだ。というわけで、その続編。ロッキーのミームを受け継ぐ、宿敵アポロの息子の物語、クリード。遅ればせながらも見てきた。
 一言で言うなれば、

クリードはいいぞ。(便乗)

 である。
 何がいいかと言えば、この作品。ロッキーのミームを受け継ぎながらも、独自の味を生み出しているからいい。そこなのだ。
 まず興奮するのがサントラだ。ロッキーシリーズとは違い、今風でクールなラップ風な曲が多い。しかしながら、「あれ、これどっかで聴いたぞ」みたいなメロディが。過去のメインテーマを踏襲したサントラが非常にいじらしいのだ。これはロッキーのサントラ聴き直して、もう一回見に行こうかとさえ考えたぐらい。
 まあ、サントラは聴いてもらえばいいだろう。
 で、ロッキーのミームと言えば何なのか。それは、勝ち負けじゃないということだ。だから僕はロッキーが好きなのだ。
 決して主人公が勝つとか、そういうご都合主義ではない。ボクシングは殺すか殺されるか、と劇中で繰り返されるが、まさにそれ。殺すか殺されるか、その戦いの中で立ち上がり、戦い続けることが出来るか。それが作品の根幹であるのだ。一人の男が立ち上がり、ボロボロになっても戦い続ける。それによって変わる何かがある。ロッキーの良さはまさしくそこにあるのだ。

 今回スタローンは、主人公ドニーのコーチ役となったロッキーを好演している。彼はもう老いぼれ、むろん戦うことなど出来なくなってしまった。その姿に思わず僕も悲しさを隠しきれなかった。遂には病魔に侵され、死を覚悟するロッキー。「もしかしてロッキー死ぬんじゃ……」という不安に、劇中何度も駆られた。本当に怖かった。だが、それでもロッキーは『立ち続ける』のである。
 『ロッキー』は、一人の男が愛する女の為に、息子の為に、立ち続ける話だった。だが、『クリード』はそれだけではない。チームであり、家族である仲間たちが、助け合い、そして戦い続ける。老い先短いロッキーの病魔との戦い、そして主人公ドニーの『クリード』という宿命との戦い。そして、シリーズ史上最高とも言えようボクシングシーンだ。ボロボロになりながらも、チャンピオンに果敢に挑むドニー。本当の試合を見ているような緊張感、そして興奮。
 ロッキー・ザ・ファイナルより九年、ロッキーのミームを受け継いだ作品は、単純な『続編』ではなく、新たな『伝説』となるだろう。