2017年11月19日日曜日

『シスターズ・ルーム』元ネタ・オリジナル楽曲総解説(Part 2 第二章 イカロス)

 前回に引き続き第二弾。今回は、『第二章 イカロス』の元ネタ・楽曲を紹介します。こちらも同人誌のページを割り振ってあるので、ぜひご購入いただき、照らし合わせながら読んでいただけるとありがたいです。こちらをBGMにしてWEB版を読むのもぜんぜんオッケー! というわけで、ともかく11月23日です。買ってね!

※以下、ネタバレを含みます。


P79, Morning Glory / Oasis

 オアシスのセカンド・アルバム、『モーニング・グローリー』から、「モーニング・グローリー」。特に名盤と名高いセカンドアルバムの表題曲。うぇいか! うぇいか! のところが好き。オリジナル曲もオアシスでいうセカンドアルバムに移行していることを暗示していたり、いなかったり。


P107, Lyla / Oasis

オアシスの六枚目のアルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』より。いま考えるとメチャメチャ年代が飛んでいる……。いまにして思えばサードから「オール・アラウンド・ザ・ワールド」をカバーすればよかったのでは……。ともかくこのころから順々に後年のアルバムに向かっています。


P 110, イカロス / シスターズ・ルーム

 シスターズ・ルーム二曲目のオリジナル曲。一曲目に対してパワフルな一曲。曲のイメージとしてはオアシスの「モーニング・グローリー」や、「ロックンロール・スター」、ビートルズの「ヘルター・スケルター」だったりする。
 歌詞は字義通りそれまでのバンド活動の様子を描いている。イカロスというタイトルは、墜落した=失敗した存在を敢えてエネルギッシュなこの曲に付けることで、爆発的なエネルギーの中に解散を暗示させたかった。……と言いたいところだが、たしかB'zの「イカロス」だった気がしないでもない……。


イカロス

午後七時キミの鳴らしたギターの音
あわせ歌った ボクの声
キミが弾くのをやめなくて
明けてしまった 土曜夜

学期終わりの真夏の日
楽器背負って来た友達と
子供のころむかしみたいに
ただ楽しくて時が過ぎたんだ

キミが弾いて 曲が産まれ
キミを見つめ 言葉ができて
キミは進み ボクはついていく
You just play. And I'll sing for you.

午前零時 ボクが走らすペンの音
あわせ弾いた キミのギター
キミが弾くの 好きだから
書けてしまった この言葉

さっき出会ったばかりの人も
ずっと昔から知ってた友も
関係ない 今このときは
光みたいに ただ過ぎていく

キミが弾いて ボクが聞いて
キミが弾いて ボクが歌って
キミはそこに ボクのそばにいて
You just play. And I'll sing for you.



P128, Never Mind / Nirvana

 ようやく登場した本作のメインヒロイン、南奏純の思い出のアルバム。「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」もギターキッズが真っ先に覚える名リフ中の名リフ。奏純がグランジやポストパンクに固執する理由は、スピンオフ作品『ストレイ・キトゥンズ』で!


P139, I'm Outta Time / Oasis

 オアシス最後のスタジオ・アルバム『ディグ・アウト・ユア・ソウル』より。弟リアムが作曲した一曲。舞結のギター趣味が雄貴と二人きりの秘め事から他人を巻き込んだ違うことになってしまう。それに対するカウンターとしてリアム作曲の曲をカバーさせたいということから選ばれた。同じリアム作曲の「ソングバード」と悩んだ結果こちらに。


P143, Suffragette City / David Bowie

 デヴィッド・ボウイの永遠の名盤、『ジギー・スターダスト』より、「サフラゲット・シティ」。後にシスターズ・ルームとも共演するこのバンドの元ネタは、しかしボウイではなく、ニューオーダーとジョイ・ディヴィジョンだったりする。ジョイ・ディヴィジョンの前身となったワルシャワは、ボウイの曲名から名前が取られている。なので、では同じくボウイの曲から取ろうということに。『ジギー・スターダスト』は不滅の名盤。


P147, The Kids Are Alright / The Who

 ザ・フーのアルバム『マイ・ジェネレーション』より。ユニオンジャックを着て眠るメンバーの写真は、アニメ『けいおん!』の元ネタにもなってることでも有名。ここでこの曲が流れていた意図としては、その歌詞にある。"I don't mind other guys dancing with my girl"(あの子が他の連中と踊ってたって、俺は気にしない)が、姉が誰かに取られてしまうことへの雄貴の葛藤と、それが大丈夫だと自己暗示をかける彼の心理を暗に示している。


P148, Nirvana

 奏純が着ているTシャツ。世界三大着ててもそのバンド知らないバンドTの一角を成す。でももちろん奏純ちゃんはニルヴァーナが好き。その詳細は、『ストレイ・キトゥンズ』で!


P161, Don’t look back in anger / Oasis

 『モーニング・グローリー』よりオアシス屈指の名曲。雄貴が歌った一節、“So I’ll start revolution from my bed”(革命はベッド脇から始めるんだ)は、ジョン・レノンとオノヨーコのPeace Bedから取られたと言われているが。ここでは、舞結の部屋のベッド脇からシスターズ・ルームが始まったことを示唆している。また、肥大化していく舞結の趣味に対して、「怒って振り返るな」(’Don't look back in anger’)と雄貴が言い聞かせているとも捉えられる。が、何かしらの意図を持って書いたはずだが、作者自身それを忘れてしまった。ここで出て来る「うるせえぞ!」と怒るオジサンに向けて「怒って振り返るな」と言っているとも取れる。


P177, Chasing Yesterday / Noel Gallagher's High Flying Birds

 オアシス解散後にノエル・ギャラガーが出した二枚目のアルバム。ここでノエルソロに触れたのは、弟の存在をなじるため?
 また当時のプロットでは、舞結がシンガーソングライターとして大成し、雄貴が落ちこぼれていくというバッドエンドの予定だった。そのため、ここでノエルの姿が舞結と重なっていたのかもしれない。


P179, Husbands  / Savages

 サヴェージズのアルバム『サイレンス・ユアセルフ』より。この曲がエンディングとなっているのは、映画『エクスマキナ』。奏純ちゃんは意外と映画オタクで、結構サブカル寄り。音楽の趣味もポスト・パンク、グランジなあたりそういうところ。


P215, Falling Down / Oasis

 オアシス最後のシングル『フォーリング・ダウン』。これがオアシスにとっての最後の曲になる。シスターズ・ルーム最後のカバー曲にこの曲を据えたのは、もちろんバンドの終焉を演出するため。


P255, マイ・グッド・ラック・ソングス / シスターズ・ルーム

 シスターズ・ルーム最後のオリジナル曲。曲のイメージとしては、「ワンダーウォール」、「リヴ・フォーエヴァー」。メイビーを繰り返しているのは、その歌詞を意識しているということで。
 シスターズ・ルームのオリジナル曲のなかで唯一の舞結作詞作曲。最終的に雄貴はこれを歌えずに逃げ出すことになる。その際に雄貴が客席からステージ上の姉を見ているのは、リアムのエピソードから。(詳細な記事を忘れたが、ライブで歌うのを放棄したリアムが客席から兄ノエルを笑っていたというエピソードがある)


マイ・グッド・ラック・ソングス

メイビー きっとそうなんだ
この時間が長くは続かないってこと
ベイビー わたし思うんだ
君が大きくなって どこかへ行ってしまうと

まだ涅槃のときじゃない
Nevermind そうでしょ?
屈折する星屑じゃない
Definitly maybe そうでしょ?

まだ大丈夫だから 上手くやってくから
まだ大丈夫だから 上手くやってくから……

メイビー たぶんそうなんだ
始まりっていうのは、いつか終わるってこと
ベイビー わたし気づいたよ
それでもわたしは大丈夫だってこと

愛には引き裂かれない
Blue Mondayそうでしょ?
屈折する星屑じゃない
Definitly maybe そうでしょ?

まだ大丈夫だから 上手くやってくから
まだ大丈夫だから 上手くやってくから……

まだ涅槃のときじゃない
Nevermind そうでしょ?
屈折する星屑じゃない
Definitly maybe そうでしょ?

もう大丈夫だから 上手くやってくから
もう大丈夫だから 上手くやってくから……


 詞は一見すると姉が弟の成長を許して、離れていくさまを歌っているように見える。しかし、実際はそれとは逆だったりする。
 「まだ涅槃のときじゃない」は、涅槃=ニルヴァーナ。ニルヴァーナは、ギター・ボーカルのカート・コバーンの自殺によって解散している。この「涅槃のときじゃない」とは、舞結なりのフロントマンの死による解散はないという決意。彼女はそれにNevermind=気にしないで、と応えている。
 「屈折する星屑じゃない」は、屈折する星屑=ジギー・スターダスト。ボウイのアルバム『ジギー・スターダスト』は、当初『屈折する星屑』という邦題だった。そしてそのアルバムでは、架空のロックスター「ジギー」の死によってロックバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」が解散する。ここでも、同じように死によってシスターズ・ルームは解散しないことを暗示している。
「愛には引き裂かれない」は、ジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート」を示し、これもフロントマンであるイアン・カーティスの自殺によって解散したジョイ・ディヴィジョンのようにはならないと意図している。つまり、弟と離れることでバンドを解散させることはないという舞結なりの意図があった……のかもしれない。





筆者:
機乃遥(@jehuty1120
どうでもいいですが11月20日は僕の誕生日なので、誕生日プレゼントだと思って買ってやってください。

喜屋武みさき(@Misaki_Can315
文学フリマ。僕はいけませんけど、会場のやせ細った青年一人よろしくおねがいします。

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