2016年11月25日金曜日

文フリお疲れ様でした!

 第23回文学フリマも無事終了しました。当サークルの本を手にとってくださった方々には感謝を……! 「『悪魔を憐れむ女』が面白かったので」と『ハートブレイカー』を買ってくださる方もいらっしゃって、感無量です。いまだ創作界隈の底辺を、ここ7,8年さまよい続けてますが、こういうことがあるのでまだやってるわけで……。
 しかしまあ、多少反省点も。
 やっぱいきなり二巻は売れんわな。

 というわけで、ルビー・チューズデイシリーズは引き続き書いていくつもりですが、おそらく次のイベントでは出せないかなぁと考えています。やるとしたら多少金に余裕を持って、一巻の増刷とかやった上でとかでしょうか。


 で、問題はです。おまえ五月出るの? というおはなし。
 いや、就活なんですけどね。ようやく就活が始まってしまうんですけどね……。


 五月も出ます。

 現在の予定では、喜屋武みさき氏との共作『シスターズ・ルーム』を物理書籍化しようかなと考えています。現在本作は鋭意執筆中&連載中。深夜に童貞二人が「姉と二人で密室で作曲とか、それ実質セックスなんじゃねえの?」とか言い合いながら書いてる話です。UKロック好きは必見。
 やるとすれば、ペーパーバック風の装丁にしたいなぁとか考えてます。


 と、来年のことを言うと鬼が笑うというのでこのへんにしておきましょう。
 文フリお疲れ様でした。

2016年11月20日日曜日

第23回文学フリマ東京、参ります。

 前回は日曜開催でしたが、今回は週の中日、水曜開催ということで。世間は祝日らしいですが、僕は必修の言語学の授業を捨てて馳せ参じます。


 ということで、できました。


『ルビー・チューズデイ〔2〕 ハートブレイカー』

 表紙イラスト、挿絵は今回も苔山雫氏に描いて頂きました。ちなみにデザインは僕がやったんですが、このチューズデイ嬢のシルエットの背景、どこだかわかりますか? ロンドンの某所なんですが、目を凝らせばわかるかもしれません。


  帯をつけるとこんな感じ


中はこんな感じ。挿絵も某スパイ映画や、某かくれんぼゲーのオマージュなどいろいろあります。


ただですね、不覚にもカバーに誤字が……。なんだよ王額って……Yが抜けとるぞ……。


ちなみに、新刊ご購入の方にはもれなくこちらのオリジナルしおりも付いちゃいます。



そしてもう一冊……
『黒い火星別冊 蒼白なるデューク』

前回間に合わなかったボウイトリビュートの補完版です。こちらはフリーペーパーですので、どうぞご自由にとっていってください。

中はこんな感じ。A5のコピー誌です。




 さて、そんなわけで来週23日(水)、サークル「ソロ充独身主義共和国連邦」は文学フリマにて

B-66

 にて参加致します。当日は
 この”るびー・ちゅーずでい”さんの看板が立っていますんで、捜してもらえれば。


 というわけで、11月23日、東京流通センターは文学フリマ東京で僕と握手!

2016年8月31日水曜日

ハッピーサッドを知れ『シング・ストリート 未来へのうた(Sing Street)』

 いい加減2016年の映画の一本や二本ぐらいレビューしろやということで。私が今年一番の映画にして、今年一番のシン~~であると信じてやまない映画をご紹介します。
シング・ストリート』です。

 正直、この映画に関して語ろうとしたら延々と語ってられるんじゃないかってぐらい。っていうか、宇多丸シネマハスラーかヒデチューを見ればもっと濃ゆい話が聴けるんじゃないか……。


 本作の監督ジョン・カーニーは、アイルランド出身の映画監督であると同時、ザ・フレイムス(The Frames)というバンドでベーシストとして活躍し、かつまた同バンドのミュージックビデオの撮影などもしていた人物。監督自身、音楽には造詣が深く、同監督作品である『ONCE ダブリンの街角で』、『はじまりもうた』も音楽を取り扱った映画として評価が高い。『ONCE』ではアカデミー賞歌曲賞とグラミー賞を受賞。『はじまりのうた』ではアカデミー賞歌曲賞にノミネート。そのような音楽を取り扱った映画で一気に名を上げたジョン・カーニーの最新作が『シング・ストリート 未来へのうた』だ。
 本作の大きな要素としてあげられるのは、80’s UKロック。そして少年の成長・青春物語だろう。
 本作では、MotörheadDuran DuranThe CureThe JamDaryl Hall & John Oates、ほかDavid BowieJoy Divisionといった70~80年代に活躍した名だたるアーティストが登場する。特に80年代、音楽シーンを席巻したのはMTV、ミュージックビデオのブーム。MotörheadStay Cleanに始まり、コナーたち兄弟がDuran DuranRioMVを見るシーンへと繋がる。彼らの父がBeatlesに言及しながらも、子供たちが食い入るようにテレビを見る姿はまさしく当時の音楽シーンのありかたを示しているだろう。当時はまさにMTV全盛期だ!
 そう、当時の流行はミュージックビデオにあった。そんなロンドンの音楽に惹かれ、コナーはバンドを結成。バンドの仲間と共にビデオの制作を始めていく。そしてその随所にも、様々なオマージュが見て取れる。コナーたちのバンドSing Streetの初めての曲になる『モデルの謎(The Riddle Of The Model)』のビデオは、お世辞にも良いできとは言えなかった。衣装は自宅から持ってきた有り合わせで統一感はないし、メンバーはやりたい放題。しかしそれは意図されたナンセンスさだと私は思った。当時のMVがどれもセンスのあるものだったわけではない。もちろんナンセンスなものもたくさんあった。代表格はJourneyの『Separate Ways』だろう。


 JourneyはMVを嫌って、一日でこのビデオを作ったなんて話もあるが、この絶妙にダサいビデオ、『モデルの謎』と似てないだろうか?


 ほら、似てる似てる。似てるって……。
 と、そんなMVのオマージュにあふれた本作。随所にわかる人にはわかるネタが仕込まれている。分かった人間からすれば楽しくて仕方ない。ジョン・カーニー、お前分かってるな! と(私は20そこそこのクソガキながら)一杯付き合いたいぐらいだ。



 続く曲、『A Beautiful Sea』では、そのオリジナルをThe Cureに辿ることが出来る。モデルを目指しロンドンに憧れる少女ラフィーナとうまく行かないなかで、コナーの兄であるブレンダンが「悲しみの喜び(Happy sad)を知れ」と渡した一枚のレコードがThe Cureだった。このHappy Sadは本作における重要なテーマの一つだろう。主人公コナーと、ヒロインのラフィーナの共通点はロンドンへの憧れである。ラフィーナはモデルを目指してロンドンへ。そしてコナーは音楽のためにロンドンを目指す。青春の中、うまくいくことばかりではない。Happy Sadというフレーズは、正直彼らの世代を駆け抜けてきたばかり(今もじゃないのか?)の自分にはかなりこたえた。


 と、ロンドンが彼らにとって夢の音楽とファッションの最先端として描かれる本作。そのため80年代アイルランドを舞台にした作品ではあるものの、フィーチャーされる音楽はイギリスのものばかりで、ダブリン出身のロックバンドである『U2』は取り扱われない。これに関しては、彼らSing StreetのモデルこそがU2であるという説もある。というのも、Sing Streetは高校の掲示板の張り紙を見たメンバーが集まってバンドを組んだが、U2もまさに同じ軌跡をたどっているからだ。そのためSing StreetはU2のことを描いているのでは? とも言われている。しかし作品の舞台は85年であるため、その点では合致しないだろう。それに私としては、あくまでもイギリス・ロンドンを象徴的に描くためにU2は出なかったものと考えている。

 さて、そんな当時の音楽やファッションが映像へ効果的に組み込まれることで、ファンとしてはニヤニヤしながら当時の音楽を懐かしめる作りになっている。だが、シングストリートの凄さはそこだけじゃあない。本当の素晴らしさはオリジナル曲にある。
 彼らSing Streetのオリジナル曲もまた80年代のテイストを持ちながらも、ただのオマージュに終わらずに80sの名曲に並んでも遜色ないものとなっている。そのようなオリジナル曲の仕掛け人こそがゲイリー・クラークだ。彼もまた80年代に活躍したスコットランドのバンドDanny Wilsonの中心人物であり、「Mary's Prayer」などの名曲を残している。


 オリジナル曲がオマージュや懐古に終わらないのがこの作品のすごいところだ。作品終盤、コナーは徐々に『Girls』や『Brown Shoes』など自分の音楽を確立していく。この曲がまたいい。
 そしてラストシーン、コナーとラフィーナの二人は船でロンドンを目指す。しかしその道中、荒波と巨大な船を目の前にして、二人の道の暗さを暗示したところで映画は終わる。映画『卒業』のラストシーンを彷彿とさせるこのシーンは、夢を追いかける二人の人生が決して楽なものではないと暗示しているのだろう。


 私はこの作品をすでに7月末に有楽町にて観ていた。上映一時間以上前だというのに席は混雑しており、最終的には平日の昼間だというのに満席という異例の事態になっていた。しかし、それだけの価値がある作品だとは確かに感じられた。ジョン・カーニーとゲイリー・クラークが手がけたオリジナル曲は、当時の名曲にも引けをとらない素晴らしい楽曲ばかりで、思わず上映後すぐに売店に寄って「サントラ下さい!」と言ってしまったほどだ。
 某映画レビュアー曰く、「ハマる人間はとことんハマる映画」だというが、私もその意見には賛成で、特にUKロックや80年代音楽シーンに思い入れがある人間にはたまらないものがある。特に私はデヴィッド・ボウイやジョイ・ディヴィジョン、ニューオーダーやザ・キュアーのファンであったので、キュアーのマネをするシーンにはとても心を惹かれたし、MTV全盛期である80年代を思わせる様々な演出は楽しくて仕方がなかった。



 A Beautiful Seaは言うまでもなくキュアーを彷彿とさせる感じがツボに入った。そのうえ、MVを作るシーンがとてもかわいらしかった。演奏中にみんなでクラップを入れるシーンなど「演奏止まるじゃん!」と思わず言いたくなってしまうが、しかし80年代のMVはそんな感じだったなぁと、生まれる前の事ながら懐かしいように感じられた。


Drive It Like You Stole ItUSダンスミュージックを思わせる曲で、特にリハーサルでコナーがBTTFにあるようなプロムの中で歌うシーンは、夢の中でありながら現実との境界が地続きとなっている、この映画の寓話的なイメージを印象付けさせる重要なシーンだった。彼が思い描く音楽のとおりにならないのは、悲哀を感じるところでもありながら、しかしこの映画における彼らの卓越した音楽そのすべてが実はコナーの妄想、彼が自分たちの音楽に酔いしれてそう見えているだけじゃないか、とさえ思わせる危うさが感じられた。


Brow Shoesは、コナーが初めて自分のことを詩にした曲だろう。それまでデュラン・デュランやキュアーといったバンド(メイクに至ってはお前はボウイかなどと野次られていてとてもかわいかった)のオマージュばかりだったのが、最後の最後で彼の音楽になる。憧れから脱却し、彼のスタイルになる音楽は、映画のラストをより際立たせる曲になっていると思う。
 他にもGirlsの歌詞の伏線や、The Riddle Of The Modelのとってつけたようなアジアンテイストとか(ニューウェーブ全盛期である)、ライブではひんしゅくを買うと言われながらも歌うバラード曲To Find Youなど捨て曲は一つもないというぐらい、サントラが素晴らしい。そのうえ映画での使われ方も工夫を凝らされていて、どの曲も好きになる箇所がある。
 UKロック、80’sミュージックが好きな人間は必ず気にいる! それだけでなく、青春映画としてすべての兄弟たちに捧げるべき2016年最高の一本だ! おなじシンでも見るべきはこっちだぞ諸君!!

2016年5月3日火曜日

文フリ東京お疲れ様でした

連休じゃねえよ! 祝日返上でずっと大学だよ!!

 とりあえず、文フリお疲れ様でした。今回は昨年よりブースもしっかり出来て、売上もそこそこ増えたので(まあ、去年一種類なのに、今年新刊二つとかいう暴挙に出たせいでもあるけれど)喜びを噛みしめております。

 というわけで、11月も出るよ!(企画は何も決まってない)
 とりあえず昨年の『ライ麦畑にとらわれて』に寄稿してくれた喜屋武みさき氏が書いてくれるとかなんとか言ってくれているので、文章はなんとかなりそうです。企画は何も思いついてないけど。
 去年より、また今年よりいいものが作れるといいなぁ……

2016年4月28日木曜日

第22回文学フリマ東京、参ります。

 世間では最大10連休とかなんとかと浮かれてやがりますが、僕が通う大学はそんなことはなく。むしろ29日以外は祝日だろうが通常授業という酷い有様。

 そんな中、5月1日(日)に東京流通センターで文学フリマ東京が開催されますよ!


 どうにも久々の日曜開催ということで、僕も大学をサボらず参加できるのでありがたや……ありがたや……。
 しかも、どうやら今回は文フリ史上最大規模の参加者数の様子。会場も以前の第二展示場ではなく、第一展示場に変更。ワンフロアで全ブースが収まるとか! (そんななか我がサークルは出展しても良いのだろうか……)


 さて、昨年末は

 数カ月後そこにいるのは、またもや適当な短編集を出す機乃の姿であるのだろうか……?

 とかなんとか不安げに言ってましたが、やってみればなんとかなるもの。それどころか、新刊は二冊も出来ちゃいましたよ!
 というわけで一冊目

『悪魔を憐れむ女 〈完全版〉』

 で、ございます。
 イラストは、昨年に引き続き苔山雫氏が。007風の装丁になりました。

 Q,何が完全版なの?
 A,さあ……?
 

 まあ、以前Webにあげていたものに加筆修正を加えたものになっています。さらに続編『ハートブレイカー』のオープニングアクトも収録。
中身はこんな感じ。
ハヤカワ風(?)になってます。

ちなみに挿絵も入ってます。やったぜ。

裏表紙。
装丁は結構こだわりが。
ハヤカワ風(?)になってます。

 と、まずは一冊目。
 『悪魔を憐れむ女 〈完全版〉』文庫版で192ページという結構なボリュームになっております。




 さて、続いて二冊目!

『黒い火星』

 こちらはデヴィッド・ボウイトリビュートを含めたSF短編集になっています。
 表紙は蒼画碧氏が描いてくださいました。ありがたやありがたや。

裏は『ジギー・スターダスト』オマージュで赤い電話ボックスになってます。

中身はこんな感じ。
A5版で二段組になってます。


 と、こちらは短編五つを収録して42ページです。
 そのほか、昨年の『ライ麦畑にとらわれて』も残部は僅かではありますが、頒布いたします。詳しくはWebカタログにも載ってます。

 今年はやる気満々。金と時間と人脈に物を言わせた結果、いいものが出来ました。売れるといいな。

 サークル『ソロ充独身主義共和国連邦』は、

イ-36
              です。

 それでは、5月1日に東京流通センターで僕と握手!


2016年1月22日金曜日

おみそれいたしました。ガルパンはいいぞ! 『ガールズ&パンツァー 劇場版』

 まわりじゃあどいつもこいつもガルパン、ガルパン……。何かに付けちゃあ「ガルパンはいいぞ」とコイツら何言ってんだ。クリード見ろよ、クリード! と、この間まで語っていたこの私。ガルパンブームも少し下火になってきたようなので、見てきました。劇場版ガルパン。
 正直なところを言いますと、ほぼ予備知識無しで見に行きました。知っていることといえば、


 ・戦車がスポーツになってる。
 ・戦車道というスポーツ。女子の嗜みらしい。
 ・なんか姉妹で色々やるらしい。


 ぐらいなもの。
 ですが、冒頭に三分ちょいでさくっと解説をしてくれたおかげで、まあ、なんとなくは世界観が分かった気がします。
 でまあ、機乃的にこの作品が良かったかどうか、率直に申し上げれば、
 
  良作、であります。

 まあ、とは言え冒頭からそんなふうに思ってた訳じゃあ無いんですよ。この映画の冒頭は、先述のように今までのザックリとした解説が為されます。廃校の危機を救うために、何とか頑張って戦車道大会で優勝しましたよ~ぐらいなもんの軽い解説。で、それが終わると直後には大会後のエキシビションマッチが始まります。で、いきなり戦車の砲撃から始まるもんですから、私も期待したんですね。まわりがアレだけスゲエスゲエ言う戦車アクションが如何ほどのものかと。しかしながら正直、冒頭のアクションはダルい。確かに、街中で戦車同士がドンパチするのはアニメならではの映像ではありますし、たくさんの戦車が一同に会して戦う姿など、それこそアニメでしか出来ない。ですが冒頭のアクションシーン。ここは正直頂けなかった。前評判が良かったせいも有りますが、ここで一気に、えー、言うほどカッコ良くねえぞこれと思ってしまった。
 しかも続くシーン。まあ、日常パートというべきでしょう。そこがなんとも萌アニメ的。まあ、そりゃそうなんですが。アニメの日常パートなんてどこもかしこもそんなようなもんで、イマイチ洋画ばっかり見ている人間からすれば鼻につくアニメクサさみたいに感じるわけです。
 そういうわけで、冒頭の言う程でもない戦車アクションと、鼻につく日常パート。このせいで僕の中では、
 腐っても深夜アニメは、深夜アニメ。
 というような意見にまとまりました。まあ、これならお前たちを論破出来るな。なーにが「ガルパンはいいぞ!」だ。という話。


 しかし、終盤にかけてのアクション。廃校撤回をかけての大学選抜チームと戦うんですが。ここで今までの私の評価はすっ飛びました。

 戦車にこんなアクションさせんの!?
 
 と、度肝を抜かされる展開の目白押し。艦砲射撃ばりの巨砲の大迫力! ドリフトする戦車! 戦車が戦車を踏み台にしたァ!? 履帯パージだとォ!? 砲撃で加速ゥ!?
 と、見たこともない、度肝を抜かれる演出ばかり。大体、洋画、戦争映画での戦車の立ち位置というと、歩兵と一緒に行動する、強力だけど動きがない。イマイチ派手さにかけるイメージ。某007の戦車アクションとか、そういうアレもありますが、基本的にミリタリー調の作品だと、戦車というのは歩兵の脅威だとか、そういうような描かれ方ばかり。しかしガルパンは、そうではない。まるでロボットアニメや、カーアクション映画を見ているように戦車を楽しめる。戦車ってこんなに動けるの!? という感じ。戦車の可能性を一気に押し広げたと言っていい。

 そして何より、私が特に気に入ったのはラスト、西住姉妹が協力して大学選抜チームのリーダー島田 愛里寿を倒すシーン。ここの何がすごいかって、西住みほの主観での長回し。そして、キャラが全くしゃべらないという所。萌アニメにはあるまじきシーンだとは思いません!? かわいい女の子キャラは一人称が故に映らないし、声優さんのかわいい声さえ出てこない。まったく喋らず、姉妹のアイコンタクトと無言のサインだけで全てが通じあい、主観で戦いが進む。そして、ラスト、ようやく三人称になり、姉妹の協力で決着が着く……!

 なんだこれ、すげえぞ!!
 
 と、思わず新宿バルト9でスタンディングオベーションしそうになる気持ちを抑える機乃。
 ともかくラストは、まったく「深夜アニメ」という枠を超越したような演出に思えました。かといって、実写映画じゃあそうそう描けない「ありえない機動」をする戦車を描く。それはアニメにしか出来ないことであるし、仮に実写映画で出来たとしても、CGゴリゴリで萎えてしまうだろう。
 これは深夜アニメという枠にはとらわれない。一つの「エンタメ映画」の完成形であると感じた。アニメーションでしか出来ない戦車の描き方。しかし、深夜アニメではない、その枠を超えたエンタメ映画。
 まったくこれはこの一言に尽きる。

 ガルパンはいいぞ。

 だが正直な所、TV版が劇場版並の演出なはずがないと思うので、TV版を見る気になれない機乃であった。

2016年1月9日土曜日

漢は立ち上がり続ける。 『クリード チャンプを継ぐ男』

 ロッキーは僕の大好きな映画の一つだ。特に1の不器用ながらも立ち上がるロッキーと、ファイナルの老いてなお戦い続ける彼の勇姿が大好きだ。というわけで、その続編。ロッキーのミームを受け継ぐ、宿敵アポロの息子の物語、クリード。遅ればせながらも見てきた。
 一言で言うなれば、

クリードはいいぞ。(便乗)

 である。
 何がいいかと言えば、この作品。ロッキーのミームを受け継ぎながらも、独自の味を生み出しているからいい。そこなのだ。
 まず興奮するのがサントラだ。ロッキーシリーズとは違い、今風でクールなラップ風な曲が多い。しかしながら、「あれ、これどっかで聴いたぞ」みたいなメロディが。過去のメインテーマを踏襲したサントラが非常にいじらしいのだ。これはロッキーのサントラ聴き直して、もう一回見に行こうかとさえ考えたぐらい。
 まあ、サントラは聴いてもらえばいいだろう。
 で、ロッキーのミームと言えば何なのか。それは、勝ち負けじゃないということだ。だから僕はロッキーが好きなのだ。
 決して主人公が勝つとか、そういうご都合主義ではない。ボクシングは殺すか殺されるか、と劇中で繰り返されるが、まさにそれ。殺すか殺されるか、その戦いの中で立ち上がり、戦い続けることが出来るか。それが作品の根幹であるのだ。一人の男が立ち上がり、ボロボロになっても戦い続ける。それによって変わる何かがある。ロッキーの良さはまさしくそこにあるのだ。

 今回スタローンは、主人公ドニーのコーチ役となったロッキーを好演している。彼はもう老いぼれ、むろん戦うことなど出来なくなってしまった。その姿に思わず僕も悲しさを隠しきれなかった。遂には病魔に侵され、死を覚悟するロッキー。「もしかしてロッキー死ぬんじゃ……」という不安に、劇中何度も駆られた。本当に怖かった。だが、それでもロッキーは『立ち続ける』のである。
 『ロッキー』は、一人の男が愛する女の為に、息子の為に、立ち続ける話だった。だが、『クリード』はそれだけではない。チームであり、家族である仲間たちが、助け合い、そして戦い続ける。老い先短いロッキーの病魔との戦い、そして主人公ドニーの『クリード』という宿命との戦い。そして、シリーズ史上最高とも言えようボクシングシーンだ。ボロボロになりながらも、チャンピオンに果敢に挑むドニー。本当の試合を見ているような緊張感、そして興奮。
 ロッキー・ザ・ファイナルより九年、ロッキーのミームを受け継いだ作品は、単純な『続編』ではなく、新たな『伝説』となるだろう。